福祉を地域の「基幹産業」に!

「自給」「自治」の次に「自立」について述べます。政治的な自立にとって不可欠なのは言うまでもなく地方分権ですが、同時に大切なのは、経済的な自立です。雇用不安が広がる中で、経済的な自立を地域がいかに達成するか。福祉を地域の「基幹産業」にすること―それが私の考えです。

 政治の世界で、福祉をビジネスとして景気・雇用の観点から捉えるべきことを初めて強調したのは、舛添要一氏だったと思います。当時としては新鮮な、注目すべき問題提起だったのですが、いつの間にかあまり論じられなくなってしまいました。おそらくその大きな理由の1つは、コムスンやニチイ学館など、一時日の出の勢いだった全国展開の大手福祉ビジネス企業がおしなべて業績不振に陥ったことが原因でしょう。そのため、福祉はそもそもビジネスにはなじまないのではないか、という懐疑論が強くなってしまいました。

 しかし、大手企業の不振はある意味当然のことです。福祉で一番大切なのは信頼関係です。地域のお年寄りとの信頼関係を、大量生産やチェーン店方式で育むことはできません。実際、介護ビジネスで健闘しているのは、地域密着型の小規模な事業体です。そうした人たちの頑張りにこそ、これからの地域経済の姿を展望できるのではないでしょうか。

 私が特に注目したいのは、NPOの役割です。私自身、福祉NPO法人の運営にたずさわっていましたが、これからNPOは雇用の吸収先としても非常に重要になるでしょう。いま日本の失業率は5%前後ですが、NPO先進国のアメリカでは、就業者人口のうちNPOに従事する人の割合は、すでに6%を超えています。つまり、日本においてもNPOは、失業問題の緩和という役割を果たす可能性を十分に持っているということです。

 小泉内閣の「改革断行宣言」が大きな期待を集めましたが、構造改革の真のキー・ポイントは何か。それもまた雇用です。財政再建や公共事業改革など、改革に対する自民党の抵抗がこれまで一定の力を得てきたのは、国民の間に雇用不安があるからでした。福祉やNPOを軸とする自立した地域経済は、そうした人たちの受け皿にもなりうるものです。

 以前は東京都の福祉は、全国でも最高のレベルでした。この高福祉体制は、美濃部都知事がつくったもので美濃部都政は「バラマキ」によってつぶれてしまったが、以後、鈴木・青島都政の下でも、この福祉体制は一貫して維持されてきました。石原都知事は、この「聖域」に手をつけました。福祉も構造改革が必要なのは確かですが、それは単なる「減量経営」であってはなりません。都の役割を縮小するのなら、市町村に権限と財源をもっとゆだねるべきです。そして、福祉の新しい担い手たる市民活動やNPOに積極的な支援を行うべきで、そうした真の「構造改革」こそが、いま求められています。