都市農業と教育の結合

 魅力あるまちというものは、「自給」「自立」「自治」、この3つの要素を兼ね備えることによって初めて成り立ちます。このうち、「自給」について私が感じていることをお話しします。

 皆さんは、東京の食料自給率がどれ位かご存知ですか? 限りなくゼロに近い、と思われるかもしれないが、実は5%位あります。わがまち八王子に限ってみれば、おそらく7%から8%位はあるでしょう。東京の「自給」の中心は野菜で、例えば立川のウドの生産は日本のおよそ55%を占めています。そうした特産物まで抱えた農業を、東京は実践しています。ところがここ10年で、約1万ヘクタールあった東京の農地が、約7500ヘクタールまで落ち込んでおり、私はこれは非常に由々しい事態だと思っています。

 私は都市農業にこだわります。今の子供たちは、野菜が突然調理されて夕食のテーブルの上に乗せられます。生産過程を全く知らずに育ってしまった子供がほとんどで、その辺の畑にニンジンが芽を出して、葉っぱだけが見えていても、それがニンジンだとは全く分かりません。つまり、農業の衰退=教育の衰退でもあります。私の知人が、「学校で馬を飼おう」という運動を行っています。自然や動物に親しむことを学校も考えているのだが、ふつう学校で飼っている動物といえばウサギのような小動物で、そうした小動物は、いたずらされたり殺されたり、いわば「いじめ」の対象にしかなっていないといいます。馬は子供たちより体が大きいし力も強い。子供たちにとって(大人にとっても)ちょっと怖い存在であります。そうした「怖さ」も含んでいなければ、自然との本当にリアリティあるふれあいはできないというのが、運動の趣旨だといいます。

 お隣の日野市には農業基本条例があり、日野で生産された野菜を市内の小中学校で優先的に消費しています。行政がそうしたインセンティブを用意しながら、農地がなくならないように、農業生産が有効にできるようにと旗を振っています。これは八王子市でも十分に実行可能なことだと思います。先に述べた「馬を飼おう」運動にしても、八王子は酪農家がけっこう頑張っているから、牛を学校につれて行ったりするのも面白いのではないかと思います。農業で深刻な問題の1つは後継者問題ですが、以前東京都には農家を市民が支える「農業ボランティア」という制度があったのに、打ち切られてしまいました。しかし八王子市の農林課は、その後も市独自の制度としてこの農業ボランティア制度を続けています。これは非常に評価できることであります。

 都市農業をこのまま衰退させないように、具体的な制度や試みを積み上げていくことが、いま求められているのではないでしょうか。東京都はそのためにもっとバックアップを行うべきです。もちろん、「自給」といっても限界があります。八王子で農業生産が昔のように復活して、八王子市民の食を満たす、などというのは全く不可能なことでしょう。しかし、都市農家を支援する、地域市民との交流を図る、地域内の流通システムを確立する、といった方策によって、現状をもう少し改善することはできます。そして何よりも子供たちのために、豊かな都市農業を残したいと強く思います。